| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P2-162

垂直風胴を用いて計測した風散布植物30種の散布体特性

*市河三英(自然研),斎藤茂勝,三村昌史,川瀬恵一,酒井敦(国際農水研),倉本惠生(森林総研),杉本剛(神奈川大工)

日本産風散布植物30種の散布体1500個体について、垂直風胴を作製して空力特性を測定した。この結果から形態との関係を調べた。

試料と測定方法: 試料は一枚翼の散布体を持つマツ科、カバノキ科、フサザクラ科、カエデ科、モクセイ科の29種と、二枚翼のクルミ科サワグルミの散布体、各種50個体である。測定に用いた垂直風胴(PIKATAKAMUI-II)は計測部を内径30cm高さ65cmの透明な円筒形とし、4m/sまでの風速を0.01m/s単位で調節できるように作製した。風速ムラは最大3%で、複数のタンポポ冠毛を空中停止させて乱流がないことを確認した。終端速度は試料が風胴内で空中停止時した時の風速とした。回転速度は空中停止中にストロボスコープを用いて測定した。

測定項目: すべての試料を対象に、空力特性として終端速度、回転速度およびコーニング角を、風胴計測環境として乾湿球温度と気圧、散布体の形態として重量、面積、翼張と翼弦長を計測した。これらの値から、翼面荷重、翼軌跡速度、アスペクト比、レイノルズ数などを求めた。翼軌跡速度は1秒間に翼の先端が描く軌跡長と今回定義したもので、翼張、回転速度および終端速度から求めた。

結果と考察:マツ科、カエデ科、カバノキ科およびフサザクラの平均終端速度は0.8〜1.4m/s、モクセイ科とサワグルミは1.4〜1.9m/sであった。翼面荷重と翼軌跡速度に直線関係が認められた。同じ翼軌跡速度を示した複数の散布体をみると、回転速度と終端速度の比にはばらつきがあった。このことから、荷重が水平回転により多く寄与する個体と降下への寄与率が高い個体があると考えられた。

日本生態学会