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一般講演 P2-166

河川によるサワグルミ種子の散布と実生の定着

*五十嵐知宏,上野直人,清和研二(東北大・農)

河川水によって散布された種子は、下流方向への長距離移動を可能にすることが知られている。散布体の水散布に関する研究は低地の草本や水生植物を中心に展開されてきたが、木本に関する水散布の研究は少ない。河畔生の樹木の定着適地として河辺の攪乱跡地が考えられるが、適地への到達確率を高めるための河川を通じた広範囲の種子の移動は重要である。本研究は山地渓流沿いに分布するサワグルミを対象に種子の水散布の有効性を明らかにすることを試みた。

調査は宮城県の江合川支流の田代川で行った。2006年夏に川沿い1m、流程およそ2kmの範囲でサワグルミ実生の樹高、立地環境、位置を調べた。水による散布距離を調べるために塗料で塗装したマーク種子20,000粒を河川に投入し定期的に調べ、さらにマーク種子の分布場所の立地環境も調べた。また、サワグルミ種子のfloating abilityの検定、水中での胚の活性を調べた。

マーク種子は散布後1ヵ月を通して移動がみられ、最大散布距離は1.4km以上だった。マーク種子は淵、段丘崖に多く着いていたが、実生は氾濫原に多く、マーク種子の比高と実生の比高のオーバーラップは小さかったのは、まだマーク種子が移動途中であったためと考えられる。種子が完全に沈んでも水散布は継続すること、水中では少なくとも2ヶ月以上は普通に生存できることが明らかになり、サワグルミ種子の水散布の可能性が示唆された。

日本生態学会