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一般講演 P2-173

アカマツ腐朽木に発生する変形菌の季節性

*高橋和成,波田善夫

変形菌は,一般に森林内の枯死木や落葉などの植物遺体を分解する細菌や菌類を摂食したり,有機物質を栄養吸収したりして生活する微生物である。変形菌は林床の腐食連鎖及び物質循環に関わっているが、林床の腐朽木上で年間を通した出現種とその発生量の消長はほとんど研究されていない。

本研究では、岡山県北部の新見市羅生門にある里山(標高446m)で約100本のアカマツ枯死木(直径10cm以上)上に出現する変形菌の子実体を2005年〜2006年まで月1回の間隔で定量的に調べた。調査では、出現種とそれらの出現頻度、コロニー面積、発生部位の材の硬さ及び含水率を記録した。変形菌は、13属22種3変種が出現した。変形菌の子実体は1月から4月には新たな出現は見られなかったが、5月から発生しはじめ7月から9月にかけて種多様性がピークになった。子実体のコロニー面積や発生した材部位の腐朽状態は季節によって異なった。

調査月ごとの種構成と出現頻度から、変形菌の子実体形成には5つの時期(5月、6月、7月〜9月、10月、11月〜12月)が認められた。季節的な優占種は、5月にはコムラサキホコリ、6月にはツノホコリ、クモノスホコリ、7月にはサビムラサキホコリ、タチフンホコリ、フシアミホコリ、8月にはチャコムラサキホコリ、10月にはエツキケホコリ、ルリホコリ、さらに11月はキララホコリであった。一方、マメホコリは通年で観察されたが、寒冷な時期での発生量がより多くなった。変形菌には、一般的に知られている高温多湿を好む種群に対して、気温上昇期や寒冷化する時期に対応して出現する種群が認められ、子実体は種によって季節的に形成されていた。

日本生態学会