| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P2-207

貝に卵をあずける魚,ビワヒガイの宿主利用パターンは最適か?

小宮竹史(京都大・院理・動物生態)

親の産卵場所の選択は,生残や初期成長といった子のパフォーマンスに影響し,ひいては親の適応度を左右する.産卵場所は生物・非生物的要因によってその質を変動させる.したがって,親は子のパフォーマンスに適した産卵場所を識別し,状況に合わせて選択的に利用すべきである(最適産卵理論;Jaenike 1978, Thompson 1988).寄生系では,とりわけ,宿主(産卵場所)の良し悪しが子のその後を支配する.そのため,宿主選択にかかる強い淘汰圧によって,適応的な繁殖戦略の進化が期待される.だが,直感的には理解しやすいものの,予測を支持する実証的研究は少ない .

本研究では,琵琶湖固有魚類コイ科ビワヒガイ Sarcocheilichthys variegatus microoculus とその産卵母貝であるイシガイ科の淡水二枚貝を対象に,宿主利用パターンの最適さを検証した.まず,おもな宿主である3種の二枚貝を用いて水槽実験を行い,仔魚の泳出率をもとめ,宿主の質を推定した.次に,二枚貝の密度が異なる2地域で野外調査を行い,宿主利用パターンを比較した.その結果,本種は貝が豊富にある地域では明確な選択性をもち,良質の宿主(ドブガイ,ササノハガイ)に偏って多くの卵をあずけるが,一方で相対的に貝が枯渇する地域では選択性が曖昧になり,低質の宿主(タテボシガイ)にも依存することが示された.以上の結果は,1)親は子の初期生残に好適な宿主を識別し,優先的に利用すること,また,2)宿主選択における意志決定は,宿主の豊富さに合わせた可変的な生活史形質であること,を示唆する.多様な底質環境をもつ琵琶湖では,二枚貝の群集構造は地域によって異なる.適応的な選好性を基礎とし,宿主の密度に合わせて柔軟に意志決定する戦略を通して,本種は状況に応じた最大適応度を獲得できると考えられる.

日本生態学会