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一般講演 P2-210

左右性が魚類の捕食に及ぼす効果:捕食行動・回避行動に見られる左右非対称性

*八杉公基,堀道雄(京大院・理)

主に魚類において、体の前後軸を中心線とする右体側と左体側とで、一方が他方より構造的・機能的に優位にあることを左右性という。タンガニイカ湖に棲息する鱗食性シクリッド類において見出されたこの現象は、その後の研究から他の様々な魚種についても存在することが確認されている。この左右性に伴って見られる現象の一つに、「交差捕食の卓越」がある。これは、捕食者が自分と同じ利きの魚を食べることを並行捕食、逆の利きの魚を食べることを交差捕食と呼ぶ場合に、魚食性魚類とその被食者の間では、交差捕食が並行捕食よりも有意に多く起こっていることを指す。これまで、複数の魚食性魚類においてこの現象が確認されており、また数理モデルからは交差捕食の卓越により左右性が維持されることが示唆されているが、どのようなメカニズムによって交差捕食の卓越が引き起こされているかについては未だ不明である。前述の鱗食性シクリッド類では、形態の左右性に伴った行動の左右方向性が見られることから、おそらくは他の魚類においても形態の左右性に一致した行動の左右方向性が存在し、それがそれぞれの利きでの有利な状況・不利な状況を生むために、捕食者・被食者の利きの組み合わせによって捕食の起こりやすさに差が生まれ、交差捕食の卓越となって現れるのだろうと予想される。しかし、鱗食性シクリッド類以外の魚類で、左右性に伴う行動の左右方向性が存在するかどうかについてはよくわかっていない。

発表者らは、交差捕食が卓越する至近要因を明らかにするために、実際に交差捕食の卓越が確認されているオオクチバスとその被食者であるヨシノボリ類を材料とし、デジタルビデオカメラを用いて両者の捕食行動・回避行動の直接観察を行った。今回の発表では、観察された行動の左右方向性について述べると共に、交差捕食が卓越する行動学的なメカニズムについても検討する。

日本生態学会