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一般講演 P2-216

トビケラの巣づくり行動

*岡野淳一(東北大・院生命),菊地永祐(東北大・東北アジア研究セ)

フタスジキソトビケラ(Psilotreta kisonensis)は,砂で筒状ケース型の携帯巣をつくる。仙台市内の河川で確認されたフタスジキソトビケラの巣の大部分が石英の透明な砂でつくられており,特異な選択性が認められた。本研究は数種の携帯巣トビケラとフタスジキソトビケラを比較しながら,この種の砂の選択基準を考察した。

実験は,フタスジキソトビケラ,ヨツメトビケラ(Odontoceridae perissoneura),ヤマトビケラ(Grossosoma spp.) ,コカクツツトビケラ(Goerodes sp.),ニンギョウトビケラ(Goera japonica) を対象に行った。兵庫県の地蔵沢,広瀬川および,その支流で各トビケラを採集,実験室にて2~3日放置した後,2種類の砂を入れたトレイに放ち,巣をつくらせ砂の選択実験を行った。選択要因として砂の色,表面粗さを考え,それに見合った石を砕き,粒度別に分け実験を行った。実験後,新たにつくられた巣部分の砂のカウントを行った。今回,考慮した選択基準Factor1:砂の色Factor2:砂の表面粗さの2つである。

実験結果から,ヤマトビケラ,ニンギョウトビケラは色,表面粗さともに選択要因ではなく,コカクツツトビケラは選択要因に色は関わっているが,表面粗さは関わっていないと考えられた。フタスジキソトビケラ,ヨツメトビケラは色による選択性が見られたが,色の要因より表面粗さが選択要因として非常に重要であることが示された。

フタスジキソトビケラ,ヨツメトビケラは筒巣に内張りをしない種であり,特徴的な砂の選択は内張りの代替であると考えられた。このことを確かめるため,さらに呼吸実験も行った。

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