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一般講演 P2-228

オタマジャクシの対捕食者行動を誘導する物質について

*道前洋史(北海道大学先端生命科学研究院),岸田治(北海道大学水産学研究科),高谷真琴(総合商研株式会社),西村欣也(北海道大学水産学研究科)

水生動物の捕食者-被食者相互関係においては、以前から特定の化学物質が相手の存在を知るうえでの重要な手がかりとして知られてきた。ミジンコやワムシはその捕食者から分泌される化学物質を手がかりにして捕食者に対する可塑的な防御形態や防御行動を発現させるといわれている。同様に、両生類における先行研究でも、捕食者誘導型の表現型可塑性(形態や行動)が捕食者から放出される化学物質の刺激によって誘導されることを示してきたが、その物質の特定までいたっていない。

北海道に生息するエゾアカガエルのオタマジャクシは、捕食者であるエゾサンショウウオやヤゴと飼育すると、その捕食者特異的な誘導防御形態を発現する。今回我々は、エゾアカガエルのオタマジャクシが上記2種の捕食者の飼育水(捕食者特有の分泌物質が溶け込んでいる)に示す対捕食者防御行動の測定と、飼育水に含まれる分泌物質の特定を試みた。物質の特定には、味覚センサーという装置を用いた。この味覚センサーは、本来食品に含まれる多様な味物質を物質選択性がある人工脂質膜に吸着させることで(例えばアミノ酸を吸着させる人工脂質膜)味を測定する。

ヤゴの飼育水に対して、極端にオタマジャクシの活動性が低くなった。また、味覚センサーを用いた分析では、ヤゴの飼育水には、サンショウウオ飼育水よりアミノ酸類が多いことが示唆された。これらの結果から、ヤゴから分泌される何らかのアミノ酸類がオタマジャクシの活動性を抑制していることが伺える。

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