| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P2-243

巣穴構造は採餌によってにどのように影響を受けるのか?

遠藤千尋(京大・理・動物生態)

地中に巣穴をつくる動物では、採餌様式と巣穴構造の間には密接な関係がある。一般に、巣穴を掘ることは地上での移動よりも多くのエネルギーが必要とされ、餌資源の分布と関連して、どのような巣穴構造をつくるかは重要である。地中にある資源を利用する場合と、地上由来の資源を利用する場合で、つくられる巣穴の構造は異なっている。植物の根を利用する場合、ある地点における資源量が十分であれば、巣穴は大きくはならないが、パッチ状に分布するような場合、巣穴は横方向に広がっていく。地中植物を採餌するモールラットは、地表近くの浅い部分に広範囲に採餌トンネルをつくり、ミミズは土壌を食べ進み、巣穴をつくっている。モグラはミミズ捕獲用のトンネルをつくり、さらに貯蔵室をつくって余剰分を保存している。外部から資源を運搬、貯食する場合は、食料貯蔵庫としての部屋をつくる。死体、ふんなどの下に穴を掘り、埋める場合もある。このように、採餌様式から巣穴構造をとらえることで、さまざまなハビタットで巣穴をつくる動物群と、その主な餌資源の分布パターンやその餌の探索パターンとの関連が明らかになり、群集の中での巣穴を掘る動物の位置づけが可能となる。

本研究ではとくに、湿地で草本の根や茎を主な餌とするケラGryllotalpa orientalisに注目し、ケラの巣穴構造を決めうる要因として、植物の分布に注目し、植物と巣穴の位置関係のデータから、植物との関係と、どのような餌探索パターンに基づき巣穴を形成しているのかを明らかにする。

日本生態学会