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一般講演 P2-253

7287アミメアリ種内分子系統から見る社会寄生の進化

*森英章(東北大・生命科学),長谷川英祐(北海道大・農),辻和希(琉球大・農),千葉聡(東北大・生命科学)

アリやハチの社会において育仔や採餌などの労働を他種に依存する形で寄生者が宿主の社会に潜り込む社会寄生という現象が見られる。このような戦略は自らが繁殖能力を持つ女王カーストにおいて生じることが多い。しかし、ワーカーに産雌単為生殖が備わった系統ではワーカーにも他コロニーに侵入する社会寄生戦略が進化する可能性が近年理論実証両面で指摘されている。

フタフシアリ亜科に属するアミメアリ(Pristmyrmex punctatus)は二次的に女王を失い、単為生殖ワーカー(通常型)のみによる共同繁殖社会を形成している。しかし、最近の研究によって社会寄生的な「単眼大型ワーカー」がコロニー内に混在している個体群があることが報告された。この単眼大型は、通常型より卵を多く生産し、育仔や採餌活動は行わないなど、利己的な遺伝形質を持っている。また、これまで三重県、香川県で確認されていたのみであったが、全国的な野外調査を行うことによりさらに7地域から発見することができた。そこで、これらの単眼大型及び様々な地域の通常型を用いて系統解析を行うことで、アミメアリにおける単眼大型ワーカーの進化パターンを明らかにすることにした。

系統解析にはミトコンドリアDNAの複数領域を用いた。その結果、本土のアミメアリは大きく2系統に分かれており、各々の系統で単眼大型が独立に進化していることが示唆された。また、同じコロニー内に存在する同型のワーカー間には遺伝子型の違いがないが、単眼大型と通常型の間では同コロニー内でも地域間の違いほどに遺伝子型が異なる場合もあった。現在までに明らかになった種内系統から本種における社会寄生の進化に関して考察する。

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