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一般講演 P3-018

流域攪乱が河川性底生生物群集へ及ぼす影響

*神山塁(北大環境科学院),森照貴(北大苫小牧研究林),三宅洋(愛媛大工学部)

流域に成立する森林の伐採は,光量の増加や土砂流出,栄養塩流出など河川環境の改変を引き起こし,河川性底生生物群集に大きな影響を及ぼす事が知られている.しかし,林床がササに覆われている地域での伐採実験では,河川環境の明確な変化が見られなかった例も報告されている.そこで本研究は,流域の森林伐採が河川性底生生物群集へ及ぼす影響を,ササに注目して明らかにすることを目的とした.

調査は北海道大学雨龍研究林を流れる泥川支流の9つの小流域で行った.Before-After Control-impactデザインを用い,2006年6月に森林の皆伐とササ刈り2つの撹乱処理を行い,皆伐+ササ刈り区,皆伐区,ササ刈り区,対照区を設定した.河川性底生生物のサンプリングと河川環境の測定は,2005年8月と11月(処理前)および2006年8月と11月(処理後)に行った.解析は一般化線形混合モデルを用いた.また,AICとAkaike weightを用いて,選択されたモデルの変数の重要性 (importance of variables)を算出した.

森林伐採とササ刈りは開空度,クロロフィルa量および堆積有機物量を増加させたが,河床の礫サイズ・土砂堆積物に関しては影響を及ぼしていなかった.また,2つの撹乱処理は総種数と総個体数を増加させたが,摂食機能群別に見るとそれぞれの個体数は異なる反応を示した.

これらの結果から森林伐採とササ刈りは河川環境や河川性底生生物に対し,一貫した傾向はなく様々な影響を及ぼす事が明らかになった.また,伐採とササ刈りには交互作用が認められることと,伐採とササ刈りのimportance of variablesは共に大きな値を示すことから,ササは河川環境の改変に対し,伐採と同様に大きな影響力を持つことが明らかになった.

日本生態学会