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一般講演 P3-021

東京湾のアマモ場葉上動物群集の空間変異

*恵良拓哉(千葉大・自然科学研究科),仲岡雅裕(千葉大・自然科学研究科),石井光廣(千葉県水産総合研究センター)

アマモ場には、現存量および種多様性が高い動物群集が形成されるが、その群集構造はさまざまな要因により複雑に変化する。極めて開放的な沿岸生態系の1つであるアマモ場生態系の保全・再生を考える上では、複数の局所群集間の変異とその関連性を考慮したメタ群集動態を理解することが重要であると思われる。本研究では、東京湾に離散的に分布する複数のアマモ場を対象に、移動性葉上動物群集の空間変異パターンおよびその決定要因について検討した。

2006年夏季に木更津1地点、富津4地点、竹岡3地点、館山3地点の各アマモ場でそりネットを用いて葉上動物を採集した。得られた試料は分類群ごとに個体密度を算出し、(1)異なる地域間、(2)異なるアマモ場間、(3)1つの藻場内の採集地点間の3つの空間階層で群集構造(多様度指数、個体密度、類似度)を比較した。また、葉上動物に影響を与えると思われる環境要因(アマモの現存量、水深、水温)と群集構造との間に相関が見られるかどうかを検討した。

多様度指数、個体密度、類似度のいずれについても、アマモ場間で有意な違いが見られたが、地域間の違いは検出されなかった。これより、群集構造の変異に寄与する要因は、数十km程度の空間スケールではなく、数km程度で強く作用していると考えられる。また、河口域近くのアマモ場で個体密度と多様度の変異が大きい傾向が見られることから、撹乱の大きさが群集構造に影響している可能性が示唆されたが、この他の環境要因と群集構造の間には強い相関は見られなかった。今後、生物的要因や、アマモ場周辺地形等のより広い空間スケールでの環境要因が群集に与える影響についても検証する必要がある。

日本生態学会