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一般講演 P3-032

冷温帯のスギ林における地表徘徊性甲虫群集の構造

*滝 若菜(筑波大・生物科学),渡辺 守(筑波大・生物科学)

腐食食物連鎖は、食物網の中で動植物の枯死体や腐敗物を生食食物連鎖に再び戻すという機能をもっている。地表徘徊性昆虫の多くはこの腐食食物連鎖上の動物であり、これらの群集構造を明らかにすることは、食物網の全体像をとらえるための基盤となる。冷温帯のスギ林に生息する地表徘徊性甲虫群集の群集構造を明らかにするため、2006年6月上旬と7月下旬、8月下旬に、長野県白馬村神城地区のスギ人工林の林床で、鳥のひき肉を入れたピットフォールトラップ調査を行なった。トラップは縦横10個ずつ合計100個を2m間隔で仕掛けている。設置から24時間後にトラップを巡回し、捕獲した昆虫を同定すると共に雌雄を判別し、体長や前胸背板幅を測定した。6月にはのべ3種57個体(4日間)、7月はのべ6種285個体(6日間)、8月は8種1216個体(7日間)の地表徘徊性甲虫が捕獲された。主な大型種は、オオヒラタシデムシとホソアカガネオサムシ、アオオサムシ、アキタクロナガオサムシ、クロナガオサムシ、オオクロナガオサムシ、マイマイカブリで、その他にPterostichus属などのゴミムシ類が捕獲されている。このうち、春繁殖型のホソアカガネオサムシがどの月においても常に優占種であり、同じく春繁殖型であるアキタクロナガオサムシとマイマイカブリは、ホソアカガネオサムシの個体数が減少する8月に優占順位が高くなった。一方、秋繁殖型のオオクロナガオサムシとクロナガオサムシやオオヒラタシデムシは7月と8月に出現した。これらの幼虫も7月と8月に捕獲されている。6月から8月にかけて、種数と個体数の増加に伴って多様性指数は高くなり、7月と8月の群集の類似度が高かった。これらの結果より、地表徘徊性甲虫群集の構造の季節変化について考察する。

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