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一般講演 P3-039

堆肥・窒素肥料の投入が水田の節足動物の発生に及ぼす影響

森本信生(中農研セ)

水田における生物群集を決定する要因として、化学肥料や有機堆肥の投入量は重要であると考えられる。しかし、これまで、同一の圃場で肥料類の投入量を操作し、害虫や天敵以外の「ただの虫」を含めた節足動物の発生量を比較した事例はほとんどみられない。

そこで茨城県谷和原の水田において、肥料の投入量が、節足動物の発生数に及ぼす影響を2006年に調査した。すなわち、約30アールの水田を分割し、窒素化学肥料(硫安,LP40,LP70,LP100)量を3段階(10アールあたり窒素量換算で0、12、24キロ)、牛糞おが屑堆肥量を3段階(10アールあたり0、2、6トン)とする組み合わせで、9区の肥料類の投入量が異なる調査区を設定した。なお、田植えは5月10日に行い、水稲品種はリーフスター(飼料用イネ)をもちいた。そして、捕虫網によるすくい取り、羽化トラップ調査を併用して、節足動物の発生量を比較した。

9月上旬のすくい取り調査の結果では、堆肥より化学肥料のほうが、節足動物の発生に対して大きな影響を及ぼす分類群が多くみられた。すなわち、カ亜目(大部分がユスリカ類)・ハエ亜目・膜翅目は、窒素肥料が多い区で、アザミウマ目・異翅亜目(カメムシ類)・同翅亜目(ウンカ・ヨコバイ類)・クモ類は窒素肥料が少ない区で有意に発生個体数が多かった。また、膜翅目・ハエ亜目は堆肥が多い区で、トンボ目は堆肥が少ない区で有意に発生個体数が多くみられた。

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