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一般講演 P3-044

台風撹乱が森林鳥類群集へ及ぼす影響の空間スケール依存性

岩本二郎,村上正志,平尾聡秀(北大・苫小牧研究林)

群集構造は環境異質性の影響を受けるが,その空間スケールは生物種あるいはギルドによって異なることが予想される.2004年9月に北海道を襲った台風18号は,50年に一度の規模であり,苫小牧研究林においても林内の約10%の面積で風倒が生じた.本研究では,台風によって生じた森林ギャップが鳥類群集に与える影響,およびその空間スケール依存性の解明を目的とした.各調査地点(30カ所)で鳥類を定点観察により調査し,そして調査地点を中心として,同心円状に10m間隔で半径100mから500mの円を発生させ,その内部の攪乱率を計算した.このデータから,鳥類種,ギルド(体サイズ・採餌ギルド)ごとの個体数,および群集全体の多様性が,森林内の林冠ギャップの割合に最も強く反応する空間スケール(functional spatial scale)を探索した.結果として,群集全体の多様性には攪乱率と有意な関係が見られなかったが,種ごとあるいはギルドごとの個体数は有意な反応を示した.種ごとの反応は,攪乱された場所を好む種と避ける種の両方が見られ,functional spatial scaleも様々であったため,この結果から鳥類の攪乱に対する反応についての一般的な傾向を見いだすのは難しい.一方,ギルドごとの攪乱に対する反応から,攪乱に対する反応に関連する鳥類の形質を見つけられる可能性がある.体サイズごとの反応を比較すると,functional spatial scaleが体サイズに従って増加する傾向が見られた.また,採餌ギルドごとに攪乱に対する反応が異なり,採餌行動あるいは場所と,攪乱に対する反応の間に関連があることが示唆された.

日本生態学会