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一般講演 P3-054

冷温帯草原群集におけるマルハナバチを介した植物種間相互作用

*辻村希望(京大生態研センター),湯本貴和(総合地球環境学研究所)

1種の送粉者が複数種の植物の送粉を行うジェネラルな送粉共生系においては、共通の送粉者を介し、植物種間で相互作用がおこる可能性がある。たとえば、複数の植物種が共同で送粉者を誘引しあう、ないし養うような互恵的相互作用がその例である。近年、こうした相互作用は群集の多様性維持メカニズムとしての重要性が指摘されているが、一方でその検証例は、擬態種―モデル種間など極端なケースに限られている。より一般的な植物群集において相互作用のおこるメカニズムは多く提唱されてきたが、それらはほとんど検証されていない。

1種の送粉者が複数種の植物種を訪花する場合のなかでも、送粉者の各個体がそれぞれ1種の植物種に特化するのか、あるいは訪花植物種が時間的に変化するのかによって、植物種間相互作用のおこるメカニズムは異なる。例えば、開花期の異なる植物種間では送粉者を養いあう互恵的相互作用が起こりうることが指摘されているが、前者ではコロニーないし個体群レベル、後者では個体レベルで作用すると予想される。しかし、温帯における送粉者として代表的なマルハナバチ類においてでさえ、そうした訪花植物種の時間的変化は未解明のままである。

そこで今回の発表では、北海道北部に位置するサロベツ湿原の植物群集において、ニセハイイロマルハナバチ各個体の訪花植物種が時間的に変化するかどうかを明らかにするため、コロニーの創設期から終末期にわたって朝夕の帰巣時の持ち帰り花粉を定期的に採取し、それぞれの季節および時間帯における花粉団子の種構成を調べた結果を報告する。さらに、コロニー周辺の開花フェノロジーと、個体およびコロニー単位における持ち帰り花粉の種構成の経時変化との対応関係から、個体およびコロニーレベルでの送粉者を介した植物種間相互作用の方向性およびメカニズムを推測する。

日本生態学会