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一般講演 P3-076

侵入種イタチハギのフェノロジーに同調したイタチハギマメゾウムシの生活環

*人見奈緒子,田中良穂(大阪女大・理),石原道博(大阪府大院・理)

世界中で侵入種の定着が問題になっている。侵入種のほとんどはその土地の環境に適応できずに消え去っていると考えられるが、なぜ一部の種のみが定着に成功し、生態系の破壊をもたらすのだろうか。本研究では、外来種の侵入環境への適応プロセスを明らかにするために、近年日本に定着に成功したイタチハギマメゾウムシの野外における生活環、すなわち本種の生活環が季節環境および寄主植物のフェノロジーに適応したものであるかを調べた。

2006年の7月から10月まで月に1回、香川県飯山町の楠見池と飯野山の2カ所でイタチハギの莢を採集し、種子の内部にイタチハギマメゾウムシの卵と幼虫および成虫が存在しているかを調べた。また、種子の成熟状態を把握するために含水率も測定した。さらに、2006年10月に楠見池と飯野山から採集した莢を自然条件下で維持し、種子内の幼虫の発育段階を観察した。

その結果、種子がついたばかりの7月にはイタチハギマメゾウムシの産卵は見られなかったが、8月には種子内に2〜3齢の第一世代幼虫が存在していた。よって7月後半に越冬世代成虫による産卵があったと考えられる。7月と8月の種子の含水率はそれぞれ64.7%、62.6%と高く、まだ種子がみずみずしい状態であった。その後、第一世代が8月下旬から9月初めにかけて羽化し、第二世代の卵を産んだ。9月の種子の含水率は31.5%で、7月と8月に比べて完熟乾燥が進んでいた。第二世代幼虫は11月までに全ての個体が休眠ステージと考えられる終齢幼虫に達していた。以上の結果は、イタチハギマメゾウムシの生活環が季節環境および寄主植物のフェノロジーに合った二化性であることを示した。

日本生態学会