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一般講演 P3-126

誘導性揮発性物質により被食防御するSagebrush(Artemisia tridentata)の遺伝構造

*石崎智美,大原雅(北大・院・環境科学),塩尻かおり(京大・生態研センター),Richard Karban(UC Davis・Department of Entomology)

植物が食害に対してさまざまな反応を示すことは、多くの種で知られている。このような反応の一つには、その後の被食を少なくするために、植物が積極的に行う防御反応がある。その中には、被食された個体の防御を誘導するだけでなく、無傷の近隣個体の防御を誘導する反応もある。このような反応では、空気中に放出される揮発性物質がシグナルとして機能することがある。それらは植食者誘導性揮発性物質(HIPV)と呼ばれ、最近、リママメなどでHIPVによる植物間の情報伝達が報告されている(例えばKost et al., 2006)。

Sagebrush(Artemisia tridentata)は北米・Great Basinの乾燥地域に生育する低木種である。Sagebrushは食害などで葉が傷つくと強い匂い(HIPV)を放出し、自身の防御を誘導する。そして、HIPV放出個体から60cm以内にいる無傷の個体でも、HIPVを受容すると防御が誘導される(Karban et al., 2006)。さらに、放出されるHIPVの成分はいくつかのパターンに分類され、そのパターンの違いが個体間の情報伝達に影響していることが考えられる。そこで、我々は誘導物質と集団構造との関連性に着目し、sagebrushが優占する群落内に10m x 10mの方形区を設置し、個体のマッピング調査、酵素多型分析による遺伝解析、HIPV成分の分析を行った。その結果、68遺伝子型が特定され、1-2m以内に遺伝構造が見られた。従って、HIPVは近縁度の高い個体に作用している可能性が示唆された。

日本生態学会