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一般講演 P3-127

斜面地形が日本海側天然スギのクローン構造に及ぼす影響

*平山貴美子(森林総研・関西), 嵜元道徳(京大・フィールド研)

日本海側の天然スギは、多雪環境に適応して、雪圧により枝が接地し新しい地上幹となるクローン成長(伏条更新)を行う。斜面地形は、それ自体が雪圧の変化を生み出す最も重要な要因の一つであるため、斜面地形とスギのクローン成長の間には何らかの関係性があることが予測され、交配様式や遺伝的多様性の維持に大きな影響を与えていると考えられる。本研究では、人為撹乱の記録のない日本海側スギ天然林内の一斜面上に設けた調査プロット(50x120m)の全上層木地上幹(dbh≧10cm)、斜面上・中・下部のサブプロット(20x20m)の全下層木地上幹(SL≧50cm, dbh<10cm)を対象に、SSR5遺伝子座を用いてジェネットの識別を行い、斜面上でのクローン構造を解明することを目的とした。

遺伝解析により、上層木132幹は77ジェネットに、下層木は斜面上・中・下部それぞれ、118幹が20ジェネット、482幹が29ジェネット、200幹が14ジェネットに識別された。Fijにより空間的自己相関を見ると、斜面上・中・下部の下層木とも6〜8m前後の遺伝的に同質なパッチの存在が認められ、それぞれのパッチは排他的に分布していた。このパッチサイズは、上層木のパッチサイズとほぼ一致した。各ジェネットにおける地上幹のサイズ構造は、斜面位置にかかわらず、その多くが逆J字型を示していた。以上のことから、斜面上でのスギは、大きな斜面地形とはほぼ独立して、比較的小さなスケールでのクローン成長を行い、一度定着した個体を維持し続けている可能性が示唆された。

日本生態学会