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一般講演 P3-128

林床草本クルマバハグマの12年間の動態

*河原崎里子(新領域融合研究センター)・相川真一(森総研・森林植生)・島谷健一郎(統数研)・加藤雅子・鈴木和雄・鈴木準一郎(首都大・生命科学)・原登志彦(北大・低温研)・堀良通(茨城大・理)

クルマバハグマは落葉樹林下の夏緑林床多年生草本で種子でのみ繁殖する。秋に散布された種子は春に芽生え,毎年,地上部を出現させ,条件がよければ個体サイズを増やしていく。地上部は1本の茎の先端に輪生状に数枚の葉を付け,有花個体はその上に花茎を伸ばす。あるサイズを超えると開花個体となり,その後は繰り返し開花する。1995-2006年(除2000年)の間,個体の生残,個体葉面積,ステージ(実生,無花,有花個体),花序数,および新規加入個体を毎年秋に追跡調査した。栄養繁殖をせず,stand-aloneのシンプルな生活史を持つこの種が種子から有花個体にいたるまでの過程を詳細に紹介する。

1995年に約250個体であったのが,次第に殖え2006年には580個体となった。当年実生の数は大きな年次変動(2-278個体)を示した。無花個体は次第に増えているが,有花個体は常に70個体前後であった。個体葉面積による個体群サイズ構造は二山型で,無花個体の増加に従い,小個体の山が次第に大きくなった。50%以上の個体が開花する閾値個体葉面積は724 cm2(11年の平均)であった。

過去11回のセンサスに10回以上出現を確認している個体のサイズとステージの変化を追った。全回とも有花であった個体はいずれも1995年当初の個体葉面積が800 cm2を超える大個体で,その後のサイズ変動は小さい。一方,センサス中1回でも無花個体に戻ってしまったものは全回有花個体と比較して個体サイズが小さかった。全回とも無花であった個体では,個体サイズの増加が認められた。これらに基づいて種子から開花に至る年数を推定する予定である。

日本生態学会