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一般講演 P3-133

多雪地造成法面における幼苗植栽の初期生長について

*林寿則(財・国際生態学センター),村上雄秀,矢ヶ崎朋樹

潜在自然植生構成樹種群の幼苗(ポット苗)植栽による森林再生事業が国内外で実施されている。近年の植栽現場においては建設発生土の有効活用が求められ、現場発生土を植栽基盤として利用するケースが増えている。また、施工技術の発達によって急勾配かつ長大な法面の造成が増加しているなど、植物にとって厳しい立地環境下における植栽現場が多くなっている。今回、日本海側多雪地の切土法面に施工された幼苗植栽地の初期生長調査を実施した。調査地は福井県越前市及び小浜市に造成された道路法面であり、植栽後1〜4年を経た樹種群が生長している。いずれもヤブツバキクラス域に位置しており、常緑広葉樹を主体とした樹種選定が行なわれた。なお、一部施工地の現場発生土は粘性が高く植栽基盤として適していないと判断されたため、土壌改良を実施した上で客土が行なわれた。生長量の測定は樹高と根際径について実施し、合わせて5×5mの永久方形区内の植生調査が行なわれた。植栽後の全体的な傾向として活着率は良好であり、一部の頂枯等を除いて初期生長は樹高、根際径ともに増加している。樹種別ではイヌシデ、クリ、ケヤキ、エゴノキなどの落葉樹において、樹高、根際径ともに増加量が大きく、立地条件の厳しい環境下における初期生長の速さが認められた。一方、常緑樹種ではスダジイやネズミモチの生長量が大きく、シラカシやタブノキ、シロダモなどについては現在までのところ初期生長が抑制されている傾向が認められた。

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