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一般講演 P3-140

外来植物の防除に利用する除草剤グリホサートの生態影響評価

*池田浩明・林 成振・喜多晃一・相田美喜(農業環境技術研究所)

外来植物の防除に除草剤を使用(化学的防除)する際には、薬剤の飛散や公共用水域への流出に留意し、在来植物への生態リスクを事前に評価した上で、安全な使用方法を確立する必要がある。そこで本研究は、化学的防除において有望と考えられる除草剤グリホサートを対象に、農薬取締法による河川流出の生態影響評価を行い、代表的な試験植物であるウキクサ類と絶滅危惧植物であるサンショウモに対する急性毒性を明らかにした。

農薬取締法に基づきグリホサート剤の環境中予測濃度を算出し、セレナストルム(緑藻類)、オオミジンコ(甲殻類)、コイ(魚類)の急性毒性値を文献調査した。また、浮遊植物であるイボウキクサ、コウキクサ、サンショウモを用いて、グリホサート剤(原体、アンモニウム塩製剤)の水耕暴露試験を行った。100 mLビーカーにグリホサート酸濃度を7段階に調整した水耕液(SIS培地)100 mLを入れ、試験植物を浮かべて、24℃、連続明条件で7日間(3、5日目に処理液を交換)培養し、ウキクサ類の葉状体数とサンショウモの乾燥重を測定し、50%影響濃度(EC50)を推定した。

農薬取締法に基づくグリホサート剤の河川流出のリスク指数(環境中予測濃度/急性毒性基準値)は、水田での使用で0.23、畑地での使用で0.00024と1未満であり、安全であると評価された。また、浮遊植物3種に対するグリホサート剤のEC50はセレナストルムの値と同等であり、感受性の種間差は小さいことが示された。したがって、グリホサート剤の河川流出による生態影響は小さいと考えられた。しかし、これまでの飛散処理試験の結果から、グリホサート剤を在来植物の茎葉部に直接噴霧した場合の影響は大きいことがわかっている。したがって、グリホサート剤で外来植物を防除する場合には、在来植物の出現状況に応じて適切な処理方法を選択する必要がある。

日本生態学会