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一般講演 P3-142

三宅島2000年噴火後のニホンイタチ(Mustela itatsi)の食性

*上杉哲雄(東大・院・農),高槻成紀(東大・博物館)

三宅島には、ノネズミによる農林業被害防除を目的として、1976年と1982年頃の2回に渡りニホンイタチ(イタチ)が導入された。その結果、捕食によりアカコッコの減少やオカダトカゲの激減など、三宅島の生態系に様々な悪影響を与えており、本種の生息状況の把握が望まれている。また、三宅島は2000年7月に大噴火を起こし、その生態系は劇的な被害を被った。噴火直後から、植生、鳥類、地表徘徊性小動物などの研究が行われ、噴火が生態系に与えた影響が調査されているが、イタチの調査は行われておらず、本種への噴火の影響はよく分かっていない。噴火によって動物群集が大きな影響を受けたため、イタチの食性もそのことを反映していると予測されるので、本研究ではそれを明らかにすることを目的とした。そこで、噴火による被害程度などが異なる6カ所の調査ルートを設定し、2005年9月から2006年8月にかけて、新しいフンを採集し分析したところ、噴火の影響はイタチの食性によく反映されていた。秋季(2005年10月)には、全てのルートで昆虫類が最も多かったが(海岸地域:32.3%、軽被害地:55.5%、中被害地2:49.8%、中被害地1:76.8%、重被害地:78.5%、裸地地域:100%)、冬季(2006年1月)には、調査ルートごとに最も多い食物項目が異なり、海岸地域はフナムシ類(36.7%)、軽被害地は昆虫類(30.4%)、中被害地2は他の植物質(37.2%)、中被害地1は昆虫類(65.0%)、重被害地は鳥類(68.7%)となっていた。このように、イタチの食性はルートごとにも季節ごとにも違いが見られる可塑的なものであり、噴火の被害が重くなるほどイタチの食性が単純になる傾向が見られた。

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