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一般講演 P3-147

スクミリンゴガイに対するクサガメの捕食効果

吉江春子,遊佐陽一(奈良女子大・理)

スクミリンゴガイPomacea canaliculataは南米原産の淡水巻貝で、現在では日本を含めアジアの多くの国でイネの有害種となっている。水路や池を含む広域的な本種の個体群抑制のためには、天敵の利用が期待されている。特に、クサガメChinemys reevesiiは、室内実験で貝捕食能力が高いことが判明しており、野外での個体数も多い。このため、本研究では、屋外におけるクサガメによるスクミリンゴガイの密度抑制効果を調べた。

2005年8月から10月の8週間、浅い池を模した2m2の容器を用いて、クサガメを放飼する区(オスガメ区・メスガメ区)としない区(コントロール区)2反復ずつ実験を行った。各容器には実験開始時に殻高1-3cmの貝200個体を放飼し、毎週個体数調査を行い、その結果を踏まえて6週目の終わりまでの毎週、最大400個体の貝を補充した。

その結果、放飼した貝の合計は、コントロール区では200個体、メスガメ区で2200個体、オスガメ区で2600個体となった。コントロール区の貝密度は初期値がほぼ維持されたのに対し、カメ区では密度が低くなり、4週目以降は生存率も0.1以下とコントロール区より有意に低くなった。最終的な累積死亡貝数は、メスガメ区で2188個体、オスガメ区で2597個体となった。なお、クサガメの放飼により、スクミリンゴガイの潜土行動が誘発されること、貝の餌として与えたウキクサ類が非常に多く残ることも認められた。

以上より、クサガメ1個体の捕食量は8週間で貝2000個体以上となり、クサガメの捕食効果は非常に高いことが判明した。また、クサガメによる植物への正の間接効果も確認された。ただし、水田など貝密度が低い場所では、本実験より捕食効果が低くなると考えられる。

日本生態学会