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一般講演 P3-150

霞ヶ浦における在来および外来タナゴ類の環境選択

*諸澤崇裕(筑波大・院・生命環境)

タイリクバラタナゴは、雑種化によるニッポンバラタナゴの衰退(Kawamura et al., 2001;長田ほか, 2003)やミヤコタナゴ・ゼニタナゴとの競合の可能性が示唆され(望月, 1997;勝呂, 1999)、在来タナゴ類への影響が懸念されることから2004年に施行された外来生物法により要注意外来種に指定された。2005年に霞ヶ浦周辺126ヵ所で実施した調査で捕獲された在来種3種、外来種3種のタナゴ類のうちタイリクバラタナゴが圧倒的多数を占めたことから、餌資源や産卵床の二枚貝をめぐってタイリクバラタナゴと在来タナゴ類の間で競合が起こっている可能性がある。そこで、本研究では在来および外来タナゴ類の環境選択について調べるため、霞ヶ浦周辺30地点において2006年6月〜11月に各地点毎月1度ビンドウによる魚類採捕と環境要因(水路の形状・溶存酸素など10項目)の測定を行った。

在来タナゴ類の採捕地点中タイリクバラタナゴも採捕された地点は、アカヒレタビラ81.8%・タナゴ100%・ヤリタナゴ85.7%といずれも高く、タイリクバラタナゴと在来タナゴ類の環境選択は似ていると考えられた。一方で、タイリクバラタナゴは3面コンクリート水路で採捕数が多く(χ2検定, P<0.001)、在来種であるアカヒレタビラ(P<0.001)・ヤリタナゴ(P=0.056)は、3面コンクリート水路より一部コンクリート水路で採捕数が多かった。さらに、タナゴ類の間で採捕時における溶存酸素量の分布は有意に異なり(一元配置分散分析, P=0.02)、タイリクバラタナゴは在来タナゴ類が採捕されない2.0〜4.0mg/lという低溶存酸素地点でも採捕された。よって、タイリクバラタナゴは環境耐性が強く、在来タナゴ類が生息できる環境のみならず、在来タナゴ類の生息に不適な環境でも生息できる可能性が考えられた。

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