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一般講演 P3-155

タイ及びシンガポールのヌノメカワニナ

*佐竹潔(国環研),三浦収(スミソニアン熱帯研究所),鶴石達(犬山里山学研),Arthit Nuntakwang(チェンマイ大),成瀬徹,Cai Yixiong(シンガポール国立大学)

ヌノメカワニナMelanoides tuberculataはトウガワカワニナ科に属する巻貝であり、東アジアから北〜東アフリカなどの熱帯から亜熱帯にかけて幅広く分布しているが、近年、カリブ海や太平洋の島々、北米、ニュージーランド、アフリカのマラウィ湖などへの移入が報告されている。本種は原産地では有性生殖と単為生殖を行う個体群が確認されているが、移入先では単為生殖を行う個体群のみが発見されており、在来の巻貝個体群との置き換わりや随伴寄生虫の持ち込みなどが問題となっている。国内では鹿児島県以南に自然分布しているが、愛知県や滋賀県で温排水の影響がある河川での生息が確認されており、小笠原諸島父島の河川でも生息が確認された(佐竹ほか, 2006)。小笠原諸島ではトウガタカワニナ科の固有種オガサワラカワニナStenomelania boninensisとヌノメカワニナが置き換わってしまう可能性が懸念される。

この研究では、父島産ヌノメカワニナの原産地などを推定する目的で、国内では琉球列島で、国外では、2006年10月にタイのチェンマイ、バンコク、プーケット、2006年12月にシンガポールでヌノメカワニナの調査を行い、得られた標本を用いて形態的・遺伝的な比較を行っているところである。本種はタイおよびシンガポールにおいて、水路、河川、貯水池、水田、休耕田脇の水路や水草が植栽されている水槽など淡水域に生息しているほか、マングローブ林の後背湿地や感潮クリークなど汽水域での生息も確認され、その環境要因はpHが6.5-9.0、水温が24.2-36.3℃、電気伝導度が0.047-19.4mS/cmであった。

日本生態学会