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一般講演 P3-158

外来種アメリカザリガニによるトンボ類幼虫への捕食圧:体サイズと水草の量による違い

*保崎有香,宮下直(東大・院・農)

アメリカザリガニは在来生態系への影響が多く報告されている侵略的外来種の一種である。日本においては在来の水生植物の切断や水生昆虫の捕食や、その結果生ずる水質の悪化等が報告されている。

静岡県桶ヶ谷沼でもザリガニの増加により希少なトンボ類、特に絶滅危惧IA類のベッコウトンボの激減が深刻な問題となっている。現在行われているザリガニの個体数管理手法として、トラップや薬剤を利用しての直接除去、捕食者である大型魚類の個体数調節等があるが、有効な手法は依然として確立していない。個体数管理にはまずどの発育段階のザリガニがどのような環境下でヤゴに対して大きく影響があるかを明らかにした上で、発育ステージにリンクした有効な除去時期やサイズ、除去環境を整え実践することが必要である。そのため、本年度はその第一段階としてザリガニの体サイズによりヤゴへの捕食圧はどのように変化するのか、それはザリガニからの隠れ家や産卵・生息場所としての水草の量によってどのように変化するのかを調べた。実験はコンテナを用いて3種類のザリガニ体サイズ(大:CL>20mm、中:12〜20、小:<12)、2種類の水草密度(粗:被度20%、密:40%前後)を人工的に作り出し、初期状態で投入したヤゴの生存数を経時的に追い違いを比較した。

ヤゴへの捕食圧は体サイズが大きいほど大きくなることがわかった。また、水草の密度が高い方がヤゴに対するザリガニからの捕食圧は軽減した。特に体サイズの大きなザリガニにおいてその傾向が強く見られた。

この結果より体サイズと基質の量による捕食圧の変化が示唆された。今後は、直接除去による個体数調整と水生植物等の水域環境の復元を複合的に検討する必要がある。

日本生態学会