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一般講演 P3-164

外来種キツネノマゴ科ヤナギバルイラソウの生態学的特性と侵略性

*宮本裕美子(高知大・院・理),石川愼吾,三宅尚(高知大・理)

観賞用に栽培されているキツネノマゴ科ヤナギバルイラソウRuellia brittoniana Leonard. はメキシコ原産の多年生草本であり、1974年ごろ沖縄県に駐留したテキサス、フロリダの軍隊により非意図的に持ち込まれた(琉球新報 1974)とされている。現在、四国や九州地方など特に温暖な地域や大都市圏での逸出が顕著で、河川域へも侵入している。そこで本研究では、本種の侵入・定着特性を明らかにし、侵略的な外来種となる可能性を検討することを目的とした。さく果あたりの種子数、稔実率を調べ、段階温度法(Washitani 1987)に従って発芽実験を行った。また、実生の定着・成長特性を明らかにするため、異なる水分、光、土壌条件を設定して成長実験を行った。本種は河川域に高い頻度で生育していたので、生育地の植生調査を行うとともに実生の沈水状態、かぶり堆積および寒さに対する耐性を明らかにするための実験を行った。さく果あたりの種子数は平均23.7粒、稔実率86.7%であった。IT系において約90%の高い発芽率を示し、一次休眠性を持たなかった。また、高温で誘導され低温で解除される二次休眠性を持っていたが、種子の寿命は1年以内で、永続的な土壌シードバンクは形成しないことが明らかとなった。実生は耐陰性が高く、成長できる水分、光、土壌の環境条件の幅は広かった。また、沈水状態、かぶり堆積に対する耐性が極めて高く、河川域の個体は倒伏した茎の節から新しく根を伸長させ、栄養繁殖を盛んに行っていた。以上の結果より、本種は種子と栄養体による旺盛な繁殖力と、撹乱やストレスに対する耐性をある程度備えており、比較的温暖な地域を中心に今後も分布を拡大し、特に河川域の撹乱地で侵略的に増加する可能性が示唆された。

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