| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨


一般講演 P3-170

宇治川で魚病被害をもたらす腹口類2種の季節動態

中井健太郎(滋賀県大・環境),*浦部美佐子(滋賀県大・環境),田中正治(大阪府水生生物センター)

宇治川とその下流の淀川に棲息するコイ科魚類には,1999年以降,冬期に腹口類症が発生している。病原体である腹口類は2種で,そのうち一種は確実に外来種である。これらの生活史解明のため,腹口類メタセルカリアの季節動態を調査した。

2006年4月から毎月,淀川から導水している寝屋川市および守口市内の2ヶ所においてオイカワを採集し,体長測定と尾鰭上のメタセルカリア計数を行った。その結果,Metacercaria A ( = Parabucephalopsis parasiluri)の感染密度は4月から9月にかけて徐々に低下し,10月から再び増加に転じ,11月以降は急激に上昇した。Metacercaria B ( = Bucephalopsis sp.)は4月から6月に感染密度がやや高く,7月以降は密度が下がった。

また,同年に宇治川で採捕されたビワコオオナマズ成魚3尾における成虫の感染個体数を調べた結果,5月にはP. parasiluri約19000個体,Bucephalopsis sp.約3000個体が感染していたが,11月には両種とも1/100以下に減少した。12月には再びP. parasiluriが増加したが,Bucephalopsis sp.はあまり変化しなかった。

以上の結果から,P. parasiluri およびBucephalopsis sp.では,第二中間宿主や終宿主の体内で翌年まで生き残る個体は少なく,生活環は1年で完結することがわかった。P. parasiluriは晩秋から冬にセルカリアを放出し,第二中間宿主を経て終宿主へ移行するが,Bucephalopsis sp.のセルカリア放出時期はそれよりも遅く,晩冬〜初夏のいずれかと推定された。

日本生態学会