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一般講演 P3-195

摂餌コストの化学量論的不均衡による消費者の"補食"パターンの進化

*加藤聡史,占部城太郎,河田雅圭

自然界にはさまざまな捕食―被食関係があり、それらがどのような要因で成立しているかという疑問は生態学における大きなテーマのひとつである。

従来の餌のエネルギー価値だけを指標とするような古典的な摂餌戦略理論においては『最良の餌が十分にあれば次善の餌は選ばない』と予測されている。しかし、生物にとって重要な資源がエネルギーだけでないことは明らかである。近年、生態化学量論の立場では、餌に含まれるエネルギーと物質的資源、もしくは、資源同士のバランスに同時に着目することの重要性を強調している。

我々は『良い餌』とは自身に必要な資源バランスを最も効率よく満たすように餌を食べようとすると考えた。しかし自然界においては、捕食者の最適なバランスを満たすような単一の餌はほとんど無く、さまざまな生物でこのミスマッチを解消するために、複数種類の餌を組み合わせて食べるgeneralistパターンが観察されている。これらの観察例を比較すると、生物ごとによってその摂餌形態はさまざまであり、餌を頻繁に切り替えることで混合食を行うような生物もいれば、生活史のある時期だけ切り出すとspecialistにしか見えないような生物もいる。

このように生物ごとに餌の切り替える頻度が異なる要因として、摂餌行動に伴うコストがあげられる。複数の資源を考えた摂餌モデルの場合、摂餌行動に伴うコストは大部分がエネルギーであり、資源獲得だけでなく資源のロスについても化学量論的不均衡は発生する。我々は簡単なモデルを用いて、生物と餌との間、および摂餌行動に際するコストでの二つの化学量論的不均衡が、捕食者の摂餌パターンに与える影響を調べた。

日本生態学会