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一般講演 P3-204

分断林における林床植物の分布と決定要因:ミヤコザサの侵入とエッジ効果・中立理論

*富松裕(首都大・理工), 山岸洋貴(北大・地球環境), 近藤錬三, 佐藤雅俊, 田中一平, 紺野康夫(帯広畜産大・畜産科学)

森林の分断化は,エッジ効果による環境条件の改変を招き,ひいては林床植物の群集構造に影響を与える可能性がある。しかし,林床植物の寿命は長いため,群集が分断後の環境に応答するまでには,かなり長い時間を要するかもしれない。また,狭い空間スケールでは,移動分散パタン(“dispersal limitation”)がもたらす空間構造の効果が大きく,環境の効果がもつ相対的重要性は小さいかもしれない。本研究では,北海道十勝平野の11の分断林に設置した45の調査区を対象として,林床植物の群集構造に影響を与える要因を分析した。調査林は約2.5km2の範囲に点在し,分断から約100-30年が経過している。分析では,調査区の環境条件や空間配置の効果,エッジ効果,林縁を中心に分布を拡大するミヤコザサ(オオクマザサ; Sasa chartacea)の役割について検討した。その結果,(1)群集の構造は,調査区の環境条件と空間配置の効果をどちらも強く受けていること,(2)環境の効果は,エッジ効果を示す光条件や腐食土層の厚さと関連づけられること,(3)調査区間の種構成の違いは,エッジからの距離やササの生育密度によって説明できるが,後者の相対的重要性が大きいことが分かった。以上から,林床植物の群集構造が分断化を強く反映し,エッジ効果によって形成された新しい環境勾配の下で再構成されたことが示唆される。また,ササの分布拡大が群集構造の変化を導く主要因として働いた可能性がある。

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