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一般講演 P3-205

二次林の階層別種構成とその成立に関る要因

森広信子

東京都奥多摩地域の二次林を、多摩川の北側地域と南側地域で比較した。標高約800m〜1400mの、主に尾根地形に成立している二次林の、木本について階層別(林冠層、中間層、低木層を区別、低木は高さ1.5m以下)に量的な記録をとった。

標高傾度に従って、樹木の種構成は変化したが、それは必ずしも気候傾度に従った変化とは考えられなかった。高標高地では自然林構成種が多くなり、種数も多くなるのに対し、低標高地では限られた種が二次林を構成していた。この傾向は林冠木で顕著で、中間層以下でははっきりしない。また、多くの地点で、林冠木にクリが多い。

多摩川の北側地域と南側地域では、低木層の出現量が大きく違う。北側地域では低木層の発達が非常に悪いのに対し、南側地域では低木が豊富であった。しかし林冠木・中間層では、多摩川の北側と南側での差は小さい。

多摩川の北側地域と南側地域では、大型有蹄類の生息履歴が異なっている。1950〜60年代までに多摩川の南側地域からは大型有蹄類が絶滅し、1990年代になって復活し始めている。これに対し、北側地域では、一時少なくなったとはいえ、大型有蹄類が絶えることなく生息していた。近年増加が目立つようになったが、南側地域ではまだ少なく、採食の影響が出ていないことが、低木層が豊富な原因と思われる。

標高傾度に沿った林冠木の構成の差は、人による利用が、集落付近では強く、遠いところでは弱かったことの反映と考えられ、人の二次林利用の不均質性が大きく影響していると思われる。クリが多いのも、意図的に残した結果である可能性がある。中間層で差が小さいのは、人の利用が弱くなった後に発達したためではないかと考えられる。

日本生態学会