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一般講演 P3-214

食物網構造と進化が被食者ー捕食者動態の安定性に及ぼす影響

*山口和香子(東北大・院・生命科学),近藤倫生(龍谷大・理工),河田雅圭(東北大・院・生命科学)

食物網の複雑性と安定性に影響を与える要因について、多くの議論がなされてきた。食物網構造は時間的に変化しないと仮定する従来の多くの研究においては、複雑な食物網ほど不安定になると予測されてきた。それに対して、近年の理論研究において、捕食者が獲得エネルギーを最大化するように利用する餌を変化させる場合、食物網が複雑になるほど、種の絶滅が起こりにくくなることが予測された。複雑な食物網が維持されるメカニズムを説明する点で、これは重要な理論予測であろう。しかし、この研究では、餌利用の変化が十分速く起こることが必要であるとする一方で、餌利用の変化がどのようなメカニズムで起きるのかは明確に示されていない。餌利用の変化のメカニズムには、表現型の可塑性と餌利用に関わる形質の進化が考えられる。捕食者の餌利用が世代を超えて変化するような進化的な変化を仮定した場合、食物網構造の複雑性の増大は種の絶滅の起こりやすさにどのような影響を与えるのだろうか?

本研究では、捕食者の餌利用形質の進化を仮定した個体ベースのモデルを用い、捕食―被食系の種数や結合度などの複雑性の指標と、種の絶滅の起こりやすさの関係を調べた。その結果、捕食―被食系が複雑なほど、絶滅が起こりやすいことがわかった。また、ある捕食者が利用する餌種の進化的変化が起こると、他種の個体群動態に影響を与えることによって、種の絶滅が起こりやすくなることが示唆された。さらに、種の絶滅の起こりやすさに影響を与える捕食―被食系の構造的特徴についても言及する。

日本生態学会