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一般講演 P3-216

山梨県上ノ原地区の半自然草原における異なる人為的管理が植生とチョウ類群集に与える影響

*久保満佐子(山梨森林研),小林隆人(宇大),北原正彦(山梨環境研),林敦子(山梨森林研)

山梨県富士山麓の半自然草原において、異なる人為的な管理によって植物の種数やチョウの訪花の数および種類の季節変化がどの様に異なるのか、そこを生息地とするチョウ(成虫)の個体数および種類の季節変化がどのように対応するのかを明らかにする。

調査地の半自然草原には6つの異なる環境が存在し、秋に草刈をして草を持ち出している防火帯(以下、防火帯)、秋に草刈をしている場所(草刈)、秋に草刈をしている未舗装の作業道路脇(未舗装路脇)、管理を行っていない放棄地(放棄草原)、クロツバラの低木林(低木林)、草原と隣接する二次林(林内)である。以上の6つの調査地で、チョウおよび訪花の種類と数の季節変化(6月〜9月)を調べた。

訪花数は未舗装路脇>草刈>防火帯>低木林>放棄草原>林内(林床)であった。チョウの出現個体数は防火帯>未舗装路脇>草刈>低木林>放棄草原>林内であり、出現種数は未舗装路脇>防火帯>草刈・低木林>放棄草原>林内であった。

防火帯では5月から訪花数が多く、9月まで絶えることはなかった。未舗装路脇と草刈は8月と9月に訪花数が多くなった。低木林は8月に訪花数が増えるが、放棄草原の訪花数は低木林より少なかった。林内ではほとんど訪花がなかった。チョウの発生は6月に始まり7月と9月に個体数が多かった。防火帯では他の調査地で個体数が少ない7月に個体数が多く、通年個体数が多かった。その他の林内以外の環境は全て8月と9月に個体数が多かったが、草原と低木林は未舗装路脇と草刈に比べると少なかった。林内では通年で個体数が少なかった。本調査地では、半自然草原のなかで異なる人為的な管理が行われることで訪花の季節変化が異なり、これにチョウ類群集の季節変化が対応しているものと思われる。

日本生態学会