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公募シンポジウム講演 S03-1

趣旨説明

山村則男(京大生態研)

近年、複雑なネットワークについての理論的研究(複雑系科学、複雑適応系)の急速な発展と計算機性能の向上により生態系や人間社会という複雑な相互作用を扱うキャパシティーが飛躍的に高まり、社会学、経済学や生態学といった広い分野に応用され始めている。我々は、総合地球環境学研究所でのプロジェクト「人間活動下の生態系ネットワークの崩壊と再生」を企画し、分野横断的なネットワーク理論の特徴を活かし、社会学や経済学と生態学とを結びつけ、これまで着手が困難であった環境問題、とくに生態系劣化の問題の解決に生かそうとしている。

このプロジェクトでは、モンゴル草原とサラワク熱帯林での実際の生態系ネットワークをモデルとして、生態系の劣化や崩壊のメカニズムを明らかにした上で、生態系の利用に伴う長期的・広域的な不安定性や不確実性を最小化し、高い生物多様性と生態系機能を持つ、より健全な生態系への再生とその維持への道筋をつけることを目的としている。さらに、特定の地域における個別の環境問題の解明と解決にとどまらず、環境問題に共通する人間社会と環境との関わりとその変化を抽出することで、地球環境学に新しいアプローチを提案することも目指している。本シンポジウムにおいて、我々の企画を紹介するが、生態学会員のみなさまより多くの有益なコメントをいただけたら幸いである。

日本生態学会