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公募シンポジウム講演 S05-2

東南アジア(マレーシア,インドネシア)での風害・乾燥化による森林衰退

米田健 (鹿児島大学)

気候変動と熱帯雨林との関連性の観点から,スマトラと半島部マレーシアの雨林で観測した風害・異常乾燥による森林衰退現象を報告する.

中部スマトラで,94年,97年,00年に異常乾燥が発生した.97年に観測した月間肥大成長速度は雨量の変動と同調し,とくに乾燥前の成長が良かった個体で同調性が明瞭に現れた.異常乾燥発生後,数年程度のずれを伴い林木の死亡率が増大し,99−04期の死亡率は大径木ほど高かった.林冠木の高い死亡率に対応して更新が加速化し,結果として成長速度が高い軟材種群の優占度が増大した.95年1月に発生した強風では10m幅×3.5km内の林木(dbh>10cm)が,本数で6.5%,基底面積で7.8%が死亡した.風向と発生時期から,大陸からのモンスーン由来の強風と推察した.死亡率が高い固定調査区での大径倒木の倒壊方向から,同種の強風撹乱が影響していること示唆された.

マレーシアPasoh森林保護区内50ha plotでの過去20年間(1985-2005)の毎木資料から,dbh>30cmの死亡率が上昇傾向にあることを確認した.00-05年期の死亡率は89−90年期の8倍(BAベース)で,最近の5年間では60cm以上の樹木の死亡率が突出していた.Hosizaki et al.(2004)は同保護区内で,本結果と同様な現象(1994−1998年)を報告している.94年9月に発生した強風により,15ha の面積内の30cm以上の個体が,本数で11%,基底面積で10%が枯れた.気候変動がこれら低緯度地帯の強風発生にどのようにかかわるか,雨林の動態を考察する上で重要である.

異常乾燥や風害は,とくに大径木に大きなリスクとなる.林冠木の死亡は,林内環境の変化に直結し,更新過程に強く影響する.林冠木の撹乱強度が雨林の種構成にどのような影響を与えるかを構成種の生育特性に基づいて考察する.

日本生態学会