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公募シンポジウム講演 S05-4

熱帯地域でのダウンバースト現象について

大野久雄 (高松地方気象台)

ダウンバーストは主として積乱雲から生じる、冷えて重くなった強い下降流である。地面に到達後激しく発散し周囲に吹き出してゆく。吹き出しの水平的な広がりは数km以下と小さく、風速は75 ms-1に達することもあり、寿命は10分程度以下と短いことが多い。この小サイズ短寿命で激しい現象は、1970年台後半に米国で多発したにおける航空機の墜落事故の原因となったことから詳細に調べられ、中緯度帯における挙動・動向の解明は大きく進んだ。日本においてもダウンバーストがもたらす突風災害が多数確認されている。しかしながら、熱帯における実態はまだほとんど把握されていない。そこで今回は、(1)「気象衛星から撮影したフロリダ半島での積乱雲の一生と世代交代」と「米国で撮影されたダウンバーストの映像」を上映し、(2)ダウンバーストの発生メカニズム、立体構造、発生に適した大気環境を解説する。つづいて、(3)熱帯収束帯では積乱雲群が頻発していること(=ダウンバースト発生の必要条件が容易に満たされる)、(4)雨季のニジェールにおけるダウンバーストと思われる画像、(5)東南アジアにおける“ダウンバースト的”に見える気象衛星画像などを紹介する。最後に、(6)熱帯域における積乱雲群の動向(波動的な振る舞い、季節内変動、年々変動など)をNCEP/NCARの再解析データを用いて解析する。

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