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公募シンポジウム講演 S08-1

地形の形成・維持・更新と山地の地形分類

田村俊和(立正大・地球環境)

地形は,いうまでもなく三次元の存在で,それぞれ特有の構成物質をもち,さまざまな時間スケールで変化している.地形の4属性(かたち,もの,うごき,とし)に基づいて地表面を何らかの類型(地形単位)に分類しつつ明らかにされる地形形成の知見が,植生などの存立に関わる情報としても生かせるはずである.地形単位には高次のものから低次のものまであり,植生との関係で注目されることが多いのは,どちらかといえば低次の地形単位,たとえば谷頭凹地や土石流ローブのような微地形であろう.微地形単位の多くは数年〜千年程度のうちにその一部または全部が作り変えられるが,中には万年スケールで存続している部分もある.どのような地形単位でも,周囲の地形と密接に影響しあってできてきたものであるから,その認定には,隣接する地形単位やより高次の地形単位の情報も欠かせない.斜面や谷底の微地形単位の多くは,水の動きにコントロールされて形成されているので,流域の中である配列傾向をもって出現する.その最小のまとまりを丘陵地の谷頭部(流域が始まるところ)で整理した図式(田村 1974,2001ほか)は,温帯山地にも基本的に適用できよう.ただ,起伏量の増大にともない,谷壁斜面のうち急傾斜部が長大になる傾向がある.そこでは,各種マスムーブメントがいろいろな強度・頻度で発生し,それがより下方や下流での地形の維持や更新にも反映されている.こうして,その位置の地表形態や表層物質の特徴,および傾斜変換線で区切られる周囲との関係などから,ある地形単位が識別でき,同時に,それがどのようにしていつごろ形成され,今どのような状態にあり,これからどうなりそうかが推定できる.植生と同様,地形も点情報にすべて還元することはできない.

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