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自由集会 W03

地域生態系の保全・再生に関する合意形成とそれを支えるモニタリング技術の開発

企画者:松田裕之(横浜国立大学・環境情報) 矢原徹一(九州大学・理)

 地域生態系の保全・再生事業においては、目標設定をめぐってしばしば意見の対立がある。我々は2004年から2006年度にかけて、環境省環境技術開発等推進費により、「全野生種を存続させる」という基本目標と、事業立案から合意形成・事業実施の各段階において保全・再生事業が守るべき諸原則を提起し、これらの目標・原則によって、意見の対立をいかに解消しえるかを検討してきた。

 合意形成には、基本目標が達成できるという保証が必要であり、そのためのモニタリング技術(調査方法と評価モデル)の開発、モニタリング調査そのものを異なる価値観を持つ利害関係者の間で協働で担う体制が重要である。その具体事例として(1)植物・水生生物・哺乳類の全野生種の保全を基本目標とする九大移転用地問題、(2)外来魚の駆除と集水域の管理事業を実施する深泥池、そして(3)シカの食害が深刻化し植物種の絶滅リスクを高めている屋久島の3つを選んで調査研究ならびに合意形成を進めてきた。その結果、合意形成における科学者の役割、客観的な調査結果に基づく共通認識の構築ならびに利害関係者の振る舞いに関する社会学的取組みの重要性についての諸原則をまとめつつあるので、本自由集会で報告し、参加者と意見交換を行う。

日本生態学会