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ESJ58 企画集会 T15-1

環境経済学から見た生物多様性: マクロ経済学によるアプロ-チ

中嶌一憲(兵庫県立大・環境人間学)


生物多様性の変化が社会経済に及ぼす影響を経済的に評価することは、生物多様性に関する環境政策立案において重要であることは言うまでもない。この生物多様性の経済評価は、気候変動問題の経済評価として話題となったStern Reviewの生態系版と言われるTEEB (The Economics of Ecosystems & Biodiversity)において取り上げられ、また2010年に名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)において議論の1つとなっていることからも、その評価手法の確立は国際的に急務であることを窺い知ることができる。

これまで環境経済学において、生物多様性の経済評価は環境評価手法(顕示選好法や表明選好法)を用いて行われきた。この環境評価手法による生物多様性の経済評価は、ある仮想的状況下での生態系そのものの経済的価値を評価するものであり、政策実施を通じた生物多様性の変化による地域別あるいは産業別の経済活動への影響や波及効果まで評価することはできない。一方、近年、わが国においても生物多様性保全に関する様々な取り組みが全国の市町村レベルにおいて検討されている。そのため、保全政策実施による経済活動や生物多様性への影響を評価すると同時に、保全政策を費用効率性の観点から評価し、経済的に優先順位の高い政策オプションを提示するための包括的な枠組みが必要である。つまり、経済学に基づいた枠組みを用いて、生物多様性保全政策をシミュレ-トすることにより、どのような政策を実施すれば、どのような影響が生態系にあり、どの地域・産業の経済活動にどのくらいの便益や費用が発現するのか、といったことを明らかにできる。

このような背景を踏まえて、環境経済学による政策評価という観点から、生物多様性保全政策の経済評価およびその評価手法に関して、近年の動向とともに紹介する。


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