| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-345  (Poster presentation)

BECCSとafforestationによるネットゼロ排出の達成は全球の生物多様性保全と両立するか
Is achieving net-zero emissions through BECCS and afforestation compatible with global biodiversity conservation?

*平田晶子(森林総合研究所), 大橋春香(森林総合研究所), 長谷川知子(立命館大学), 藤森真一郎(京都大学), 高橋潔(国立環境研究所), 松井哲哉(森林総合研究所)
*Akiko HIRATA(FFPRI), Haruka OHASHI(FFPRI), Tomoko HASEGAWA(Ritsumeikan Univ.), Shinichiro FUJIMORI(Kyoto Univ.), Kiyoshi TAKAHASHI(NIES), Tetsuya MATSUI(FFPRI)

今世紀中ごろまでに世界の温室効果ガス排出量をネットゼロにするという世界的な目標を達成するためには、温室効果ガスの排出削減に加えて、大規模な植林や炭素固定・回収付きバイオエネルギー(BECCS)等を用いた炭素隔離が必須であるとされている。しかし、このような大規模な土地利用改変を伴う緩和策は、生物多様性へ深刻な影響を与える可能性がある。そこで本研究では、ネットゼロ排出を達成するための植林やBECCSを用いた緩和策が生物多様性に与える影響を、全球スケールで評価した。将来の土地利用や気候の変化の影響を定量的に評価するために、(1)特段の緩和策を実施しなかった場合を想定したシナリオ(なりゆきシナリオ)、(2)植林を主軸に2100年までにネットゼロ排出を達成する緩和策シナリオ(植林シナリオ)、(3)BECCSを主軸とした緩和策シナリオ(BECCSシナリオ)、(4)植林とBECCSの両方を組み合わせた緩和策シナリオ(植林+BECCSシナリオ)の4種の土地利用・気候シナリオを設定し、それぞれのシナリオ下での生物多様性の変化を全球スケールで評価した。

解析の結果、気候変動によって全球の生物多様性は減少するが、植林やBECCSの導入による気候変動の緩和は、生物多様性の損失を抑える可能性が示された。BECCSシナリオでは、植林シナリオより生物多様性の損失が抑えられる傾向があったが、その影響には地域差が見られた。また、炭素隔離に貢献した地域ほど、生物多様性への負の影響が大きくなる傾向がみられた。炭素隔離の効率と生物多様性保全の両方を考慮した上で、地域ごとに最適な対策を検討する必要がある。


日本生態学会