| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) A1-04

日本産希少ラン科植物エビネ及びキエビネにおけるウイルス発生状況

*川上清久(秋田県大・生物資源科学研究科), 藤晋一(秋田県大・生物資源科学研究科および生物資源科学部), 三吉一光(秋田県大・生物資源科学研究科および生物資源科学部)

演者ら(2007)は伊豆諸島の一部の島に特産のニオイエビネ(Calanthe izu-insularis Ohwi et Satomi)の自生株に、キュウリモザイクウイルス(CMV)が感染していることを明らかにした(Austuralian J. Bot 2007)。このようなエビネ属植物におけるCMVの感染が、自生域が狭小なニオイエビネに限定された現象であるか否かを明らかにするために、我が国の里山に広く分布しているエビネ (Cal. discolor Lindl.)およびキエビネ(Cal. sieboldii Dence.)の自生株を対象にCMVの感染の実態を調査した。

秋田県と千葉県産のエビネ、および山口県産のキエビネを合計86株供試し、RT-PCR-サザン法によってウイルスの存否を調査した。3箇所いずれの産地の検体においても、CMVが(7-50%)検出された。また、ウイルスは株を掘り上げた直後よりも、栽培開始2−4週間後に検出される事例が多かった。さらに自生個体を掘り上げる時期が、その後の栽培中におけるウイルス濃度の上昇に及ぼす影響を調査した。その結果、開花期よりも新葉展開期に採取した株ではその後の栽培期間中においてより高い頻度でCMVが検出された。なお、自生地より経日的に葉片を採取し、ウイルス検定を行ったがCMVが検出されなかった。以上の結果から、我が国に自生するエビネやキエビネには、低い濃度であるが広い範囲でCMVが感染していると考えられる。また、株を掘り上げた直後ではウイルスの濃度は検出限界より低い場合が多いため、新葉展開期に株を掘り上げ、続けて栽培を行い、経日的にCMVの検定を行うことにより、より正確な感染の実態を解明することが可能となった。

日本生態学会