| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) A2-06

不完全な生息データから生息適地を推定する:奄美大島のイシカワガエル鳴き声調査から

*川崎菜実,亘悠哉(東大院・農),山下亮,落合智,戸田敏久,西真弘,野口浩人,登博志,福田稔,松田悦郎,山室一樹,山口良彦,吉原隆太,琉子盛夫(奄美マングースバスターズ),迫田拓,永井弓子(奄美野生生物保護センター),宮下直(東大院・農)

広域での生息適地の予測地図は、開発などの生息地改変の防止などに用いることができ、希少種の保全計画において重要な資料である。環境変数を用いたモデルによる生息適地の推定は、GISなどのソフトウェアにより比較的容易に行えるようになってきている。推定モデルを構築するための在/不在調査における問題として、偽の不在観察データによる誤差があげられる。これに対処する手法として、1)1回の調査における生息確認率(detectability)を推定してモデルに含める手法と、2)不在観察を用いずに在データのみを用いてモデルを構築する手法が考えられる。

イシカワガエルは沖縄島と奄美大島のみに生息し、絶滅危惧IB類に指定されている希少種である。生息地である奄美大島は急峻な地形で森林が深く、全島を直接調査するのは困難である。さらに外来種マングースの侵入域では、観察だけでは本来の生息適地を特定できないと考えられる。そこで本研究では、イシカワガエルの生息適地を推定し、地図上に表すことを目的とし、標高・斜面角度・斜面方向・斜面の凹凸・土壌湿性度指数などの環境情報を説明変数、鳴き声調査による生息地データを従属変数としてモデルを構築し、得られたモデルを未調査地域へ外挿した。偽の不在観察に対処するため、上記(1)の手法としてPRESENCEモデル(MacKenzie et al., 2002)による重回帰分析、(2)の手法として最大情報量(エントロピー)を基準としたモデル作成(MAXENT; Phillips et al., 2006)を行い、両モデルによる結果を比較し、その有効性を検証する。

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