| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) A2-07

風力発電におけるマガンの衝突リスク評価

杉本寛(横浜国大),松田裕之(横浜国大)

風力発電は、温室効果ガスの排出が少なく化石燃料への依存度が低い新エネルギーの一つとして世界的に導入が促進されている。一方、欧米では風力発電の設置増加に従い鳥類への衝突・撹乱・生息地の喪失といった事例が報告されはじめた。国内でも風力発電施設が鳥類の飛翔ルートに計画される事例があり、鳥類への影響が懸念されている。福井県あわら市の風力発電事業地も越冬マガンのねぐらと採餌場の中間に位置し、朝夕の移動の際に風力発電による衝突・撹乱の発生が懸念されている。

本研究ではあわら市の事例を対象としたマガンの衝突リスクに着目し、衝突個体数の推定を目的とした。そのためにマガンが計画地を一定方向に定期的に飛翔すると仮定し、なおかつ風車を回避することを考慮した衝突リスクモデルを構築した。このモデルは、風力発電事業地の通過率、回転面高度の飛翔率、回転面の幅員内の飛翔率、そしてブレードへの衝突率から構成されている。さらに、風力発電施設の回避率、事業地内における風車を回避する確率を反映させた。推定衝突数を得るため、2005、2006年度の冬季に計画地およびその周辺における朝夕計103回の調査結果を用いた(データの提供は電源開発(株)による)。調査項目は日時・気象・飛行経路・個体数・飛行高度(上空30m以下、30〜110m、110m以上)である。その結果、衝突個体数は0.7羽/年と推定された。なお、このモデルはマガンが計画地をかすめた調査結果を含めていること、風車のブレード回転面は鳥類個体に対して正面を向いていること、常に風車が稼動していること等の仮定を置いていることから、推定衝突個体数は過大評価と考えられる。

日本生態学会