| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) B1-02

西オーストラリアの塩害地におけるユーカリ植林木の葉の水分特性

齋藤隆実,曽根恒星(東大院・理),栗本耕平,林和典(日本製紙・森林研),野口航,寺島一郎(東大院・理)

オーストラリア西部では牧草地を造成する際の大規模な森林伐採によって地表面に塩分が集積し問題になってきた。この塩害対策として、また温暖化を防ぐためのCO2吸収源として、塩害地や乾燥地への植林が試みられている。乾燥地での植林には乾燥ストレスに耐性を持つ精英樹を植えることが有効と考えられる。しかし、精英樹の選抜は難しく、それは植林木のどのような性質が乾燥耐性と結びつくのか明らかでないからである。そこで、本研究ではユーカリ植林木の葉の水分特性を調べ、樹木の乾燥耐性のしくみを明らかにすることを目的とした。

材料として、Eucalyptus globulusの高成長性系統(NP1)および塩耐性(M1)あるいは乾燥耐性(M75)を持つと期待される系統を利用した。植林木は母樹から挿し木によって増やしたクローン個体なので、系統内での個体間の遺伝的背景は等しい。したがって系統間での葉の性質の違いをより明確にできると期待される。土壌条件のよい良好地と塩害地に調査地を設け、約1年生の苗を植えてから2年間季節変化を追跡した。

野外での測定の結果、高成長性および塩耐性系統は塩害地で成長を低下させたが、乾燥耐性系統はほぼ同じだった。日中の葉の水ポテンシャルには大きな季節変化があったが、塩害地では冬季の値が低いため季節変化の幅は小さかった。葉のPV曲線から、しおれ点での葉の水ポテンシャルには季節変化が見られなかった。また、乾燥耐性系統で若干値が低かった。体積弾性率は塩耐性および乾燥耐性系統で明らかに高かった。気孔コンダクタンスは塩害地の塩耐性および乾燥耐性系統で値が低かった。このような系統間の違いはとくに植栽後2年目から顕著になりつつある。本大会では、観察された性質がどのように個体の乾燥耐性と結びついているのかについて考察したい。

日本生態学会