| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) B1-14

雄性両性異株の維持機構:マルバアオダモ雄株花粉は両性花株花粉より多くの種子を残せるのか

*岡崎純子(大阪教育大・教員養成),原綾子(大阪教育大・教員養成),石田清(森林総研・関西)

被子植物の示す性表現は次世代を生み出す植物の繁殖に関わる重要な形質であり、植物種群の多様性を生みだす分類形質となっている。このなかで雑居性と総称される性型の一つである雄性両性異株性は雄株と両性株から繁殖集団が構成される性型であり、この性型を示すことが報告されている生物は非常に少なく、動物で約30種、植物では50種ほどが報告されているにすぎない。この性型の進化・維持機構については、雄株の著しく高い繁殖成功度を保証する要因、高い外交配率、強い近交弱勢という交配様式に関わる要因や性型間での異なる空間構造・遺伝構造という生態学的要因が関与しているのではないかと指摘されているが、どの要因がどのようにこの非常に希な性表現の維持に関与しているのか野外植物を扱って明らかにした研究例は少ない。

本研究では雄性両性異株性を示す亜高木樹種マルバアオダモ(モクセイ科)を用い、雄株が花粉親として高い繁殖成功度を持つかどうかを野外集団での雄株花粉と両性株花粉の混合花粉による交配実験とマイクロサテライトマーカーを用いた遺伝学的な手法により検証した。調査は、大阪府柏原市大阪教育大学構内の二次林に設置したコドラートで行った。2007年4月に開花した個体についてFEMSATAL4遺伝子座の遺伝子型を調べ、遺伝子型から区別できる両性株と雄株をそれぞれ20個体選定し花粉親とした。これらの株の花序から花粉を採取し、雄株、両性株各約40万粒ずつ採取し、よく混合した後、花粉銃であらかじめ袋がけしておいた両性株の花序に吹きつけ交配を行った。8月に結実した種子を採取し、得られた種子各30粒の遺伝子型を調べ、母樹と花粉を使用した株の遺伝子型の比較から、得られた種子の花粉親を判定した。本講演ではこの解析の結果から、マルバアオダモにおける雄性両性異株の維持機構について議論をおこなう。

日本生態学会