| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) B2-06

排水路の三面コンクリート化がイシガイ類に及ぼす影響:底質および魚類宿主生息環境改変を介した負の効果

*根岸淳二郎,佐川志朗,大森徹治,萱場祐一 (独)土木研究所 自然共生研究センター

イシガイ目淡水二枚貝(イシガイ類)は、大きな生物量を持つろ過食者であること、またタナゴ類の再生産に不可欠であることなどから、陸水生態系の多様性およびその機能に重要な役割を果たしていると考えられる。現在、生息場所環境の改変・悪化に伴ったイシガイ類の生息数・生息範囲の減少が各地で報告されており、その保全には生息環境条件の解明が急務である。本研究は、イシガイ科に属するマツカサガイ(Pronodularia japanensis)が高密度で生息する農業用排水路を対象とし、その生息に重要な環境条件を底質材料と魚類寄生宿主の観点から評価した。全長約200m(水面幅約60cm、勾配約0.2%)の水路を、三面コンクリート張りである上流100m(三面区間)と、水底部が土砂によって構成されている下流100m(自然区間)に分類した。二タイプの各区間内に、三つの調査区(全長12m)を設け、マツカサガイの生息密度およびサイズ構成(4月)、物理環境(灌漑期8月と非灌漑期3月)、三面区間における体積土砂量、そして宿主魚類の生息密度などを計測した。生息密度は、三面区間で有意に低く、また三面区間内の生息密度分布は堆積土砂量によって説明された。流速と水深に基づいた物理環境条件は、自然区間の流路内植生繁茂により、特に灌漑期に区間タイプ間で明瞭な違いを示し、これに伴って宿主魚類の生息密度は有意に自然区間で高かった。これらの結果から、自然区間でのイシガイ類の良好な生息環境は、個体が潜行定位できる土砂および宿主が長期生息可能な環境の両者によって維持されていることが示唆された。

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