| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) C2-09

グリーンアノールの個体群構造と効率的な捕獲方法

*戸田光彦,中川直美,鋤柄直純(自然環境研究センター)

本種は侵略的な外来爬虫類で、捕食によって在来昆虫に著しい影響をもたらしていることから特定外来生物に指定されている。小笠原で実施されている外来生物対策事業において、本種は最も重点的に防除を進めるべき種のひとつとされている。計画的な防除を実施するために、父島において本種の個体群生態学的な特性を調べた。

本種の一腹卵数は1であり、活動期間中に継続して産卵をくり返すことが知られている。既存文献及び雌の剖検から、小笠原における本種の産卵期は最長で4月から9月と推定された。雌が12日ごとに1卵を算出すると仮定すると、雌の各個体は年に平均15.3個の卵を産出すると推定された。標識再捕法に基づく幼体の経年生存率は年によって0.036〜0.115、成体のそれは0.127〜0.252とそれぞれ推定された。成体の生存率の方が幼体よりも高く、孵化後の初期死亡率が高いが、成熟後は相対的に死亡しにくくなると推定された。これらの値から生命表を作成したところ、1,000個の卵から1年後の成熟まで生存するものが103個体、2年後まで残るものは26個体と推定され、成体の大部分は1歳か2歳であると推定された。

父島における本種の生息密度として、1,450個体/ヘクタールという値が得られた。これらのパラメータを推移行列モデルに当てはめたところ、捕獲圧のない状況下で個体群は緩やかに増加し、15年後の生息密度は1.8倍に達するとされた。一方、雌成体の90%を毎年捕獲すれば、ほぼ3年で個体群を絶滅させることが可能と推定され、もし個体群を3年以内に根絶させるためには、毎年90%以上の雌成体を捕獲し続けることが必要であると結論づけられた。効率的な捕獲を達成するためには、樹幹に設置した粘着トラップが有効であると結論された。今後はより効率的なトラップを開発する一方、在来の小動物の混獲を防止することが重要である。

日本生態学会