| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) C2-10

セイヨウオオマルハナバチの巣の発達と花粉消費量

*米田昌浩(環境研),神戸裕哉(アリスタ),土田浩治(岐阜大),五箇公一(環境研)

生態学における競争原理から、侵入種が在来種との間に生存と増殖に必須な資源をめぐって競争した場合、要求する資源の共通性が大きい在来種ほど侵入種との競争に由来する負のインパクトを強く受けると推測される。

特定外来生物セイヨウオオマルハナバチ(Bombus terrestris、以下、セイヨウオオマル)では、花粉はコロニーの発達に必須な資源なので、花粉資源をめぐって在来種マルハナバチと競争する。セイヨウオオマルは野外でどれくらいの花粉資源を奪い取っているのだろうか。これを知るために、セイヨウオオマルがコロニーを完遂するのに必要な花粉の消費量を調査し、成虫羽化個体数から花粉消費量を推定する手法の開発を試みた。

セイヨウオオマルの商品コロニー11群について、木製の飼育箱(21.0×27.0×19.5 cm)により、専用飼育室(25°C、湿度60%RH、15L; 9D)内において、最初のワーカー羽化後から最後の個体が羽化するまで飼育した。餌として、ショ糖液(65%、スクロース)を常に吸汁できるようにし、セイヨウミツバチから採集した花粉荷を、直径4.5 cmのプラスチック容器に十分な量を入れて供与し、無くなる前に交換した(1〜3日間隔)。供与時の重量と交換時の重量を差を求めて、その期間の花粉消費量(g)とした。巣の発達の指標として花粉の交換時に成虫の羽化個体数を調べた。

上記の結果からコロニーが消費した花粉量を計算し、産出成虫数との関係を導き、既報のセイヨウオオマルの野生巣の羽化個体数からそれらの花粉の消費量を推定した。また、同じ生態ニッチェを持つ他種のハナバチと比較し、セイヨウオオマルの潜在的な花粉獲得の競争力について考察した。

日本生態学会