| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) C2-11

神奈川県におけるアライグマの空間分布の推定

石井宏昌(横浜国大),岡野美佐夫(野生動物保護管理事務所),松田裕之(横浜国大)

近年、アライグマ(Procyon lotor)の野生化による農作物の食害や家屋侵入などの生活被害が多発しており、さらに生態系への影響も懸念されている。それを受けて神奈川県では平成18年度に防除実施計画を策定し、さまざまな被害対策が実施されている。毎年アライグマの捕獲が行われているが、現状の捕獲は対症療法的な対策となっており、分布拡大の防止も含めた効率的な捕獲方法の検討が急務となっている。そこで本研究では、現在の分布状況の把握を目的として捕獲データをもとにCPUE(catch per unit effort)の空間分布の推定を試みた。

神奈川県を約1km四方の区域(3次メッシュ)に分割し、区域ごとに平成16年から18年度のアライグマの捕獲数と努力量のデータを集計した。また、現存植生図から落葉広葉樹林、常緑広葉樹林、草地、農地、市街地、開放水域などのアライグマの生息に影響していると考えられる環境要因を抽出した。これらのデータを元に、位置情報(座標データ)の多項式と環境要因を説明変数、CPUEを従属変数とする回帰式を立て、年度ごとにCPUEを推定した。さらに、対象地域内で捕獲の行われなかった区域についても回帰式をもとにCPUEを予測した。多項式の次数をAICによって選択した結果、次数が上がるほど良いモデルとなった。

ただし、誘引餌として使用される餌の種類にばらつきがあること、市町村ごとに捕獲の実施内容が異なり、ワナの貸出し期間や被害内容による対応の違いなどから、今回使用した捕獲データには多くの測定誤差が存在することに留意する必要がある。

日本生態学会