| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) D2-01

東シベリアにおけるLarix cajanderiの成長過程

城田徹央(北大農),斎藤秀之(北大農),高橋邦秀(北大農),T.C.Maximov(IBPC,RAS-SD)

東シベリアの永久凍土地域に成立するLarix cajanderi成熟林において、森林の空間構造と幹の成長過程の調査および解析を行った。2003年から2004年にかけて,50m四方の3調査区を設置し,毎木の位置とサイズ調査を調べた。解析の結果,大きな個体が規則的な空間分布を、小さな個体が集中的な空間分布を示し、さらに両者は互いに避けあっていた。この空間構造の特性から、この森林がギャップ下更新によって維持されていることが示唆された。この地域の撹乱体制としては地表火が主たる要因であると考えられる。そこで次に2004年および2005年に採取された計7個体の幹年輪と火傷痕から、火災履歴、樹高成長、DBH成長を再現し,相互関係を調べた。7個体のうち5個体は約200年生、2個体は約125年生であった。また火傷痕の解析結果から、この地域の火災再来感覚は14年から33年であることがわかった。一部の火災イベントは幹の成長にほとんど影響を与えなかったが、一部の火災イベントは10年間以上にわたり強く成長を抑制した。多くの個体では成長抑制期間の後はそれ以前の成長量にまで回復するが、一部の個体ではそれ以上の成長を示した。これは抑制からの開放だけでなく、火災により競争相手が間引かれた結果であると推察された。すなわち樹齢やサイズが等しくても,個体をとりまく環境が火災によって偶発的に変化するために、成長応答は個体によって多様であったと考えられる。一方、個体によるDBH−樹高アロメトリー(トラジェクトリー)の差が小さかったことから、樹高とDBHの火災に対する応答の違いは小さいと考えられた。

日本生態学会